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いわゆる「戦力外通告」
選手と所属するクラブとの来期の契約について通知される文書で
「来年2月1日以降、貴殿とは契約を締結する意思はありません」
と提示されることを指す。
毎年11月30日までに来期の契約を
結ばない選手に通知しなければならない。
2000年の11月も半ばを過ぎた日のことだった。
彼本人の口から、今年一杯でチームを
離れなければならなくなってしまった…と直接告げられる。
シーズン終盤、彼自身の起用方法から見て、
薄々は分かってはいたけれど、
こうして改めてハッキリと言われるのは、やはりショックだった。
練習後、夕暮れの大神グラウンド、
11月の冷たい相模川の川風に吹かれながら、
ただただ黙ってお互い立ち尽くしていた。
そして、とうとう日本を離れる最後の日がやってきてしまった。
クラブハウスを後にする彼を見送るために自分は
練習場である大神グラウンドへと出かけた。
カバンには、生まれて初めて、
誰かのために買った花束を入れていた。
その前日・・・
仕事帰りの花屋でのこと。
「あっ、あのう・・・花束が欲しいんですけど・・・」
「はい。女性の方にですか?」
「い、いえ、あのう・・・、パラグアイの人にあげたいんですけど・・・」
しばし沈黙。
思わず見つめあってしまう二人。
結局、花束を買うのは初めてだし、
まるっきり勝手も分からないので、
その女性店員さんに素直に相談することにした。
その女性店員さんのお見立てで、
多分外国の方にも無難であろう、
とのことでカスミ草をベースとした花束を作ってもらった。
帰りの電車の中、恥ずかしかったのでなるべく身体で
花束を隠すようにして家路についた。
普段の帰り道が何だかいつもよりも長く感じた。
そして、家に着いたら汗びっしょりになっていた。
それから、その花束にカードを付けようと思い、
新橋で購入したスペイン語の本を引っ張りだして、
何を書こうかしばし考えた。
あんまり凝ったセリフは書けないので…
というか本に載っていないので(何しろ初歩の内容なのだ)
シンプルにこう書いた。
「Para Siempre DANY」
(いつまでも忘れないよダニー)
そして、最後の瞬間。
空港へと向かうタクシーに乗り込むダニーに花束とカードを渡す。
まるで最初のキッカケの時の再現かのように、
驚いた表情をしてから満面の笑顔を見せ、
がっしりと固く握手をし、抱き付いてきた。
彼とスタッフを乗せたタクシーを見送り、
目的を果たせた自分は大神グラウンドを後にした。
その帰り道、相模川の冷たい川風に吹かれながら、
涙をこらえつつ、ただひたすら歩いていた。
「その3」へつづく
※画像と記事の内容は全く関係ありません
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