「・・・は、はい」
仕事場のすぐ近所の整体院。
俺はうつ伏せになってマッサージを受けている。
そして普段通り、その女性スタッフと軽口を叩きつつ、
その何気ないやりとりを楽しんでいるところだ。
その、穏やかな、ゆったりとした時間がにわかに変わったのは、
俺の不用意な(後から考えれば、だが)一言だった。
その女性スタッフは、
キロロのピアノを弾いてる方に微妙に似ていて、
南方系というか、ハッキリとした顔立ちで、
いかにも情が厚そうな雰囲気を全身から漂わせている。
こういう仕事をしているから、
誠に当然ではあるけれど力も強くて、
腕力に割りと自信がある俺ではあるが、
彼女にはタジタジになることも決して少なくない。
「・・・何かスポーツとかやってたの?柔道とか、レスリングとか・・・」
「やめてください」
ピシャリと言い放つ。
「こう見えても私、おしとやかで通ってるんですからね」
「おしとやか、ねぇ・・・」
俺のその言い方に、彼女はあからさまにムッとしたようだった。
「それでおしとやかだったら、
そこら辺歩いてる人みんな・・・いだだだだだだッ!!!」
急に腰の辺りを揉む力が増す。
・・・そこで冒頭でのやりとりにつながる訳だ。
彼女はここの整体院に通う人(お年寄りが圧倒的に多い)から、
とにかく好かれているのは確かだ。
実際、孫の相手に・・・なんて話も一度や二度ではないらしい。
「へぇ。世間の嫁不足ってのは深刻な問題なんだねぇ・・・はぐッ!!!」
そこまで言いかけたところで、
俺の腰はガキッ!!とスサマジイ音を立てて奇妙な形でねじれた。
「・・・だいぶ腰は痛んでますねぇ」
彼女は極めて事務的に、
いや、そう俺に見られてる時点で失敗なのだが、
機械的に振る舞い、あまり抑揚のない声でようつぶやく。
内心全く違い思いなのは日を見るより明らかだった。
「それから・・・」
「ひッ!」
彼女はキッ、と俺を見下ろす。
その表情は険しく視線は鋭い。
片や、それを見返す俺と言えば、
車にひかれてしまったアマガエルのような無様な格好であり、
この時点でも勝負あった!という感じでもある。
重苦しい沈黙の空気が包む。
依然として施術しては貰ってるものの、
二人の間には隙間が出来てしまったかのようだった。
シュンシュンという加湿器の音だけが、その隙間を埋める。
「・・・それから、昨日、お昼に角のマツキヨの前を歩いてたでしょ?」
「ああ、歩いてたかな・・・」
「その時に私がせっかく挨拶したのになんで無視したの?」
「いや、だって、俺、目が悪いからさ、
それで・・・気づかなかったのかな・・・多分」
意外なセリフに額にジワッと汗がにじむ。
それは決して効き過ぎる暖房のせいではなかった。
「・・・ふうん。ニヤニヤしててイヤらしい。
どうせまた変なこと考えてたんでしょ」
「なッ!!何を、この・・・!!」
グギッ!!!!
そこまで言いかけ、上半身を起こそうとしたところで、
必殺のヒジ、とヒザのコンボを食らう。
痛みのビッグウェーブが俺を襲う。
ああ、これだったらまだ腰の痛みの方が耐えられるな・・・
徐々に暗くなっていく視界の中、
そんなことをぼんやりと考える。
レディファースト
やっぱり先達(せんだつ)はあらまほしきもの、なのであるな。
『徒然草』で兼好法師も、そうおっしゃってた。
次からは十分気をつけよう。
その、『次』が来るならば・・・
腰が痛いのは辛いものです。
私も14年間悩まされました。
私が考案した腰痛解消法をお試しください。
現在、日本で一番多く実践されるようになりました。
【3分腰痛解消法】で、検索すると見つかります。
腰をお大事に。
お蔭様で今は落ち着いてますが、
今度試してみたいと思います。