2008年01月23日

友だちから恋人に変わるとき。

男は24歳。


静岡から上京して来て、
小田急沿線の某駅に住んでいる。


いつも利用している24時間営業のスーパーで、
レジのアルバイトをしていたその娘と出会った。


「あのう、ひょっとして・・・なんですけど」

「はい?」

「もしかして、前にサンクスでバイトしてませんでしたか?」

「・・・え?ええ、そうですけど・・・」


レジの若い女の子に唐突に話しかけられて、
一瞬何のことか戸惑ってしまったものの、そう答える。
確かに以前サンクスでバイトはしていたのだ。


「私、よく覚えていたんですよ」


彼女はクスッと笑って、
ヒマワリのような笑顔を向けてそう言った。

その笑顔を見ながら、
ちょっとだけ暖かい気持ちになる。


そこで素早くメールアドレスを交換し、
それからちょくちょく二人で遊ぶようになった。


そして、
男の住む部屋にも遊びに来るようになった。


ある日のこと。


その彼女の得意料理である鍋を、
二人でつついていた時のことだ。


「どうしたの?何だか元気ないじゃない」



ずっと元気のない彼女の様子に気づいた男は、
俯いた顔を覗き込むようにして声をかける。


「私って、あんまり魅力ないのかなあ・・・」


湯気を上げる鍋越しに、唐突にポツリと呟く。


「・・・な、何言ってんの。この鍋美味しいなぁ。アハハ」


男は平静を装うとしたものの、
その声は明らかに上ずっていた。


「・・・私じゃダメですか?」

「何のこと言ってんのさ。あのねえ、
男の前でそんなこと言っちゃダメだよ。第一、まだ高校生じゃん」

「そんなの関係ないもん」

「いや、でも・・・そんなこと言ってたら、
ホラ、セフレって言うの?身体だけ、みたいになっちゃうよ〜」


男はギャグっぽくそう答える。
しかし、それは完璧に空回る。


「それしかないんだったら、それでもいいです・・・」

「いっ!いやいやいや・・・。
そんなねぇ、女の子がそんなこと言うんじゃありません!
アンタ、ズバリ地獄に落ちるわよぉ〜」


などと、にわかに某占い師化して説教をしてしまうのであった。


男には、この微妙な空気・・・


いわゆる『良い雰囲気』がたまらなく心地悪かった。


少しでもこの流れを変えたかったのだ。


別にお互い付き合ってる訳じゃない。


このままの関係だっていいじゃないか。


年の差はちょっとあるけど、
電話でしゃべったりするぐらいだったら相変わらず楽しい。


せっかくの「仲の良い兄妹」みたいな関係を、
わざわざ壊してしまう必要はない。


相手の中に踏み込んでしまったら、
もう後には引き返せなくなってしまう。


男にはそのことがたまらなく怖かったのかも知れない。


結局、男の姑息かつささやかな努力は報われず、
その日は二人とも無言のまま別れた。


今でも、相変わらず『妹のような存在』として、
たまに遊んだりメールしたりしている。

電話とメールの頻度はどんどん少なくなってるけど。



これで良かったんだよな・・・


ほんの少しだけ痛む心を抱えながらそう呟く。


そして、
あともう少しで卒業を迎える彼女の、
あのヒマワリのような笑顔を思い出し、
静かに微笑むのであった。





ブレスは定番商品。すべての邪気を取り除いてくれる「水晶」と、女性に人気の恋に効く「ローズクウォーツ」で作ってあります。女..

ラベル:友情 恋愛
posted by RT at 01:10| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 夢想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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